ユーザーやデータの増大への対応、老朽化したシステムの更新やデータセンターのスリム化、セキュリティやコンプライアンスの強化など、企業の情報基盤には解決しなければならない課題がいくつもある。ここでは多くの企業が抱えているであろう具体的な5つのケースを挙げ、クラウドサービスの導入に向けて進むべき方向を検討していく。

TEXT:インサイトイメージ 川添貴生、インプレスジャパン 内田泰仁

 

 クラウドサービスが企業の注目を集めるようになった理由のうち、もっとも大きいのは「多くの企業が抱えている課題を解決できる可能性があるから」だろう。それでは、具体的にどういった課題の解決が期待されているのだろうか。答えは企業によってさまざまだが、多くの場合は「運用負担の軽減」が挙げられる。

 これまで情報基盤の運用は企業に大きな負担を強いてきた。特に自社のオフィス内あるいはデータセンター内に設置し、自社の管理下で運用しているサーバー、すなわちオンプレミスサーバーを持っている場合は、保守やメンテナンス、故障時の対応はもちろん、OSやサーバーアプリケーションなどのソフトウェアのアップデートなど、IT環境を運用し継続して利用するにはさまざまな管理や保守の作業に対応する必要がある。さらに昨今では、セキュリティ対策やコンプライアンスへの対応、災害対策なども重要視されるようになっており、その実現のために必要となる人的リソースの確保、あるいはコストは企業にとって大きな負担となっている。

 クラウドサービスを利用すれば、こうした課題を解決できる可能性がある。保守運用作業の負担を大幅に軽減できるほか、必要な機能、あるいは仕組みが含まれているサービスを利用すれば、高いレベルのセキュリティ対策やコンプライアンス対応も自力で導入するよりも容易に実現できる。またクラウドサービスは堅牢なデータセンターで運用されていることが多く、災害に強いことも大きな魅力だろう。

 本企画では、多くの企業が情報基盤の運用において抱えている代表的な課題について、5つのケースに分類し、今回と次回の2回に渡って紹介していく。そして、これらの課題について、クラウドサービスの採用の効果や、代表的な統合型の企業向けクラウドサービスであるGoogle Apps for BusinessとOffice 365を採用する場合のポイントなどを紹介していく。企業の規模や、現在置かれている状況によって、5つのケースのうちの1つないし複数に当てはまる、ということがあるかもしれない。まずは本項を参照に、自社が抱える課題を見つけて整理していただき、導入検討の参考としていただきたい。

ケース(1)サーバーが老朽化してシステムの刷新が必要

 定期的にメンテナンスを行っていたとしても、コンピューター機器にいずれは寿命が訪れる、ということは避けようのないことだ。深刻な故障が発生した、交換用のハードウェアの入手性に問題が出てきた、ユーザー数やデータ流量の増加に伴い古い機材ではパフォーマンスが出なくなった、など原因はさまざまだが、老朽化したサーバーは物理的に交換せざるを得ない。

 また、使用しているOSのサポート期限が終了した場合には、セキュリティ上のリスクを回避するためにもOSの入れ替え、場合によってはハードウェアごとの交換が必要になってくるだろう。この流れは、オンプレミスサーバーを運用する限りは避けがたいものだ。 数年ぶりのハードウェア交換、となると、その間の低価格化とパフォーマンスの向上は目を見張るものがある。場合によっては、前回のシステム更新時と同程度やそれ以下の初期コストで、従来以上のパフォーマンスが得られる新しいシステムが導入できることもある。短期的には「効果的な投資」と見えなくもないが、数年が経てばやはり老朽化、陳腐化し、そのときにはまた大きな投資が必要になってしまう。

 このような、システムの大幅な刷新が求められている機会は、クラウドサービスに乗り換える大きなチャンスと言える。クラウドサービスの場合、基本的にユーザー企業のシステム管理者はサーバーの老朽化への対策やOSのセキュリティ対策やバージョン管理といった作業を負担する必要は一切ない。このような作業はすべて、サービス提供側が実施することだからだ。ユーザー企業は、サービス提供側が「責任を持って」運用するクラウドサービスの機能・メリットを享受すればいいだけだ。

 環境の移行の手順は、Google Apps for BusinessとOffice 365、あるいはユーザー数や現在のシステム構成によって最適な方法が異なる。本書を参考に、適切な移行計画を策定していこう。

ポイント
自前のハードウェアを持つ必要がなくなるので
ハードウェアの保守や将来の投資の削減が可能!
 
ケース(2)運用コストを下げたい

 情報基盤を維持・運用していくために必要なコストは、(1)サーバーの保守費用、(2)設置場所の費用や電気料金、(3)ネットワーク費用、(4)管理者の人件費、といったランニングコストが必要になってくる。サーバーの運用コストを下げるには場合には、これらのランニングコストを削減していくことがポイントとなる。

 最新のサーバーを利用すれば、パフォーマンスの向上や省電力化などの効果で設置場所の費用や電気料金が削減できる可能性は十分にあるが、自前のサーバーを持つ以上は、上記の4つのコストはゼロにすることはできない。また、情報基盤の重要性の向上、サーバーが持つ機能の高度化やシステムの複雑化を考慮すると、管理者の負担はどんどん増加し、人件費の削減は一段と困難にもなるだろう。

 一方、Google Apps for BusinessとOffice 365といった代表的なクラウドサービスを利用する場合、必要なランニングコストは、(1)クラウドサービスの利用料、(2)管理担当者の人件費、という2つ集約される。サービスの利用料には、クラウドサービスを提供するシステムの設置・運用管理・性能向上に必要な費用までが内包しており、サーバーの場所代や電気代、ネットワークの費用といったコストが別途発生することはない。管理者が自社のサーバーをメンテナンスする必要がなくなるので、情報基盤の運用に関する作業の量が大幅に減り、システムの管理コストの削減も見込める。

 小規模な企業の場合、ほかの業務も行っているスタッフが管理者を兼任するといったケースも少なくない。また、大規模な企業であれば、情報基盤の管理運用のために多くの人材を管理部門に抱えていることもある。クラウド化により管理作業の削減が進めば、兼任スタッフを主たる業務に集中させる、技術スキルの高い人材を活かして新事業に取り組む、といったことも可能になってくるだろう。

ポイント
クラウド化でランニングコストを大幅に削減
管理運用の負担も減るので人的リソースにも余裕が生まれる!
 

※次回は、拡張性、コンプライアンス対策、安全性について紹介する。


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