最適な「情報基盤のクラウド化」を実現するためのポイントを見極める
 

今回の企画ではここまで、サービスの進化の流れ、導入による課題解決や効果、メールを例とした機能および使い勝手の違いといった面からGoogle AppsとOffice 365を検証してきたが、それでは導入する際にはどちらを選ぶべきなのだろうか。改めてサービス選択のポイントを考えてみた。

TEXT:インサイトイメージ 川添 貴生

 

 メールやスケジュール、個人・グループ・企業間での情報共有などの情報系から、調達、製造、流通、販売などのリソースや情報の管理、一企業にとどまらない情報の共有や連携など、日々の業務・事業展開を支える基幹系まで、さまざまなクラウドサービスが続々と登場している。その中から本書では、IT業界において極めて大きな影響力を誇るグーグル、そしてマイクロソフトの2社から登場した「Google Apps for Business」と「Office 365」を比較検証してきた。実際に、メールや情報共有をクラウド化するに際し、我々は何に着目していけばいいのだろうか。

機能の面における選択のポイント

 機能の面は、両サービスの優劣は付けにくい。たとえば情報共有機能としては、Google Apps for BusinessならGoogleグループやGoogleドライブ、Office 365ならSharePoint Onlineといった機能が提供されている。SharePoint Onlineはユーザー自身がカスタマイズして多彩な情報を社内ポータルとしてまとめられるという点が秀でているが、シンプルなファイル共有機能としてはWindowsやAndroid向けに専用クライアントが提供されているGoogle ドライブにアドバンテージがある。

 このように、同じ目的であっても、ハッキリとした違いが見て取れる機能もある一方で、デスクトップアプリケーションであるOutlook 2010を使ってメールを送受信したりスケジュールを管理したりする場合には、どちらのサービスを使っていても違いをほとんど感じることはない。機能面での選択のポイントは、自社のワークスタイルにより近いサービスはどちらかを考えることにあるといえる。

システム構成の面における選択のポイント

 だが、システム構成の面に目を向けると、両サービスには大きく差が出る。これはサービスのルーツ、これまでの歴史からも影響されている違いだ。

 Google Apps for Businessは、インターネット上で完結するサービスであることをうたっている。一部に専用クライアントはあるものの、基本的にはサービス運用もデータもすべてはインターネット上に存在している。一方、Office 365は、オンプレミスサーバーがルーツの一部となっているサービスである。そのバックグラウンドには、Windows Server、Exchange ServerやSharePoint Serverで培ってきた技術があり、クラウド化された現在であっても、これらのオンプレミスサーバーとの連携というものが考慮されている。

 たとえば現時点ならば、メールや情報共有はOffice 365を利用しつつ、認証・人事・資産管理の基盤のActive Directory、高速なアクセスと機密保持を考慮した社内ファイルサーバー、ユニファイドコミュニケーションを強化するLync Serverの3種類はオンプレミスサーバーで運用し、クラウドとオンプレミスの両方を高度に連携させて事業の基盤とするということが、マイクロソフト1社の製品・サービスに一本化したうえで実現可能だ。

 また、セキュリティに対して厳しいEUとビジネスをしている場合など、日本国内の法令だけでなく、世界規模で通用するコンプライアンス対策や業界標準の認証に準拠する必要がある。この際には、Office 365が提供する認証や柔軟な展開が役立つだろう。

 将来的に企業をどのように運営していくのか、どのような事業展開を行っていくのかまで考慮してシステム構成を検討するのは、システム管理者の判断の範ちゅうを超えているかもしれない。最終的には、導入を検討する企業全体の課題として、経営側の判断も加えて比較・検討していく必要が出てくるだろう。

導入環境の規模や利用したい機能の違いによって、情報基盤の移行方法や利用するソリューションは変わってくる。移行に必要な手間や期間、コストを考慮して、自社の環境にあった移行方法が用意されているかどうかも選択の基準となる。
 
利用者目線での選択のポイント

 もう1つ意識したいのは、移行に伴う一般の社員、ユーザーにかかる負担である。単純にデスクトップアプリケーションだけを使ってアクセスするのであれば、両者とも大きな違いはないが、たとえば自宅や外出先からはWebアプリケーション経由でメールの読み書きやスケジュール管理を行わせるといった使い方を計画する例も多い。

 このような場合、デスクトップアプリケーション環境とWebアプリケーション環境のインターフェイスに大きな違いがあると、改めてマニュアルを用意したり、トレーニングを実施したりする必要がある。これは情報システム部門にとっても負担になるが、ユーザーにとっても新たな操作を覚えるのはストレスとなる。旧来の環境で提供できていたサービスが、移行後は利用できなくなるというのも利用者にとって不満となりやすい。このあたりも十分にチェックすべきだろう。

 ユーザー数によっては、適切な知識を事前に身につけ、適切な計画が立案できれば、システムインテグレーターの力を借りずに自力でクラウドサービスに移行することも可能である。一方、企業規模が大きくなれば、既存環境からクラウドサービスへの移行がすんなりと進むことは希だ。この際に重要となるのが技術情報やサポート、導入支援サービスであり、自社にとってどちらのサービスの方がこうした協力を得られるかどうかも重要な判断基準となるだろう。

メールサービスをWebブラウザーから利用する場合のユーザーインターフェイスの違いがエンドユーザーにとって思わぬ負担になることもある。

 このように、同じ「クラウドサービス」と言っても、採用・導入の判断材料となる要素は、単に製品の機能や価格だけではない。将来の方針や社内のユーザーの声なども考慮し、自社にとってベストなサービスはどちらかを考えていただきたい。


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