仕事や家庭、人間関係……「正直、疲れた」というあなたに
住職・精神科医の著者が贈る心を癒やす一冊
思い当たることはありませんか?
- ▼「心の乱れ」チェック
- イライラが抑えられない
- 新しい環境に慣れない
- 周りの評価が気になる
「あるある」と思った人は
心が乱れている傾向あり!
上司からの無茶なお願い!
イライラが抑えられない
私、今感情に支配されています
会社組織の中で働いていると、時として無茶な要求を上司から振られ、自分では抱えきれないイライラを感じてしまうことがあります。
イライラを抱えたままで行動に移すことは良くありません。コミュニケーションが雑になり、集中力が途切れがちになります。そんなときあなたはマイナスの感情に支配された状態になっているのです。
イライラを連鎖させるか、手放すか
人間は感情の動物です。他者のせいで思い通りにいかないとき、瞬時にイライラを感じてしまいます。問題なのは負の感情を引きずってしまうこと。いったん負の感情にとらわれると、その連鎖から抜け出るのは容易ではありません。
マインドフルネスの世界では、イライラや怒りを心から手放すことを推奨しています。では怒りの手放し方を教えましょう。
イライラのピークは6秒
怒りをうまくコントロールする「アンガー・マネジメント理論」では、怒りのピークは6秒と言われています。怒りに満ちたときあなたの呼吸は浅くなっていませんか? そこでゆっくり深呼吸を3回繰り返しましょう。
怒りのピークが過ぎ、意識が負の感情から呼吸に切り替わります。
呼吸は最高のツール
イライラしているときは、交感神経が優位になっています。交感神経は「戦う神経」であり過剰なストレスを感じたときに優位に働きます。それに対して副交感神経は「休む神経」であり気持ちを緩める働きをします。
- 息を吸う→交感神経を働かせる
- 息を吐く→副交感神経を働かせる
深い呼吸で落ち着きを戻せるのは、息を吐くことで副交感神経を働かせることができるからです。感情によって呼吸は左右されますが、呼吸によって感情を左右できるのです。
新しい職場に慣れない!
気が休まりません
環境の変化はストレスを感じやすい
入学や入社、転居や転勤、留学、転校、昇進など、生活環境が変化するとメンタルに不調をきたすことがあります。入学や昇進といったおめでたい出来事ですらストレスになりうるのです。そんなストレスによって心のバランスを失った状態が、いわゆる「適応障害」です。新しい環境に適応しようと思い、頑張っても適応できず、心身に不調が出てしまう障害です。
禅僧修行を経た気づき
私は30歳のときから建長寺で3年半におよぶ禅僧修行をはじめました。まさに環境の激変です。それまでの生活とはあまりにも違う環境にさらされ、自分の心をどこに置いたらいいのか分からなくなりました。
ところがあるとき気づいたのです。その場その場を集中すればいいということに。坐禅のときは坐禅のことしか考えなければいいのです。とてもシンプルなことですが、そのことに気づいてから心がずっと軽くなったことを覚えています。
「日々是好日」の本当の意味
「日々是好日」という禅語があります。私たちはよく「今日はいい日になりますように」と祈りますが、そうではなく、晴れの日も雨の日も、たとえ暴風の日であっても、その日は二度と訪れることのない一日であるというのが禅の解釈です。その日その日を全身全霊で生き切ることの大切さを凝縮した言葉といえます。
寝る前に5分の瞑想で心をリセット
さまざまな環境変化にさらされてストレスを感じたときに、私がお勧めしたいのは寝る前の5分の瞑想です。禅では「夜坐」と言い、禅の修行の一日は必ず夜坐で終わります。寝る前に瞑想をすることで、今日一日をリセットするのです。一日一日にメリハリをつけることができるでしょう。
本書では、さまざまな瞑想法を紹介しています。ぜひ、自分に会った瞑想法を見つけてください。
どう見られている?
自分の評価が気になる
裏を返せば、人に認められたい
「上司は私のことを評価してない」「既読スルー。嫌われたのかな?」などなど。人の評価や、周りと比べて凹んだ経験はありませんか?
人の目が気になるということは、裏を返せば「認められたい」ということ。この「承認欲求」は人間誰しも持っている欲求であり、すなわち「自己愛」の一種です。
「自己愛」という魔物
自己愛は本来、悪者でも何でもありません。適度な自己愛は自分を支えてくれるものです。
たとえば、生まれたての赤ちゃんは自分と他人の違いを認識できません。しかし次第に脳機能が発達し、両親と関わる中で自分が他者と違う存在であることに気づきます。これが「自我」の芽生えです。やがて学校や社会に出て、周りと自我との間に摩擦が生じ、承認欲求へと変化するのです。
承認欲求があること自体は悪いことではありませんが、強すぎると自己愛が肥大化し、周囲の目線ばかり気になってしまうのです。
あなたの自己愛は健全?
「健全な自己愛」と「肥大化した自己愛」を見分ける方法はたった1つ。そこに不安を感じるかどうかです。たとえば「努力する自分を褒めてあげよう」「自分はこんなに頑張っているのに報われない」。後者の自己愛には不安が見えます。
無自覚な自己愛は「苦しみの連鎖」を呼びます。自分の肥大化した自己愛を正確に知ることが第一歩です。
お坊さんに訊きたい……
お坊さんであり、精神科医でもある著者に日頃悩んでいることを訊いてみました。
とにかく運が悪いです
飲食店では注文をスルーされ、会社ではコピー機の紙切れが起こり、使っている電化製品は原因不明の不具合、行く先々で自動ドアが開かない。そんな「ちょっとした不運」に遭遇する確率が高いんです。考えすぎでしょうか?
実は禅の考えには「運」という概念はないのです
日常生活、特に順調にいっていない時期は、自分の運の悪さをどうしても意識してしまいますよね。
実は禅の考えには「運」という概念がないのです。因果応報という言葉に示されるように、すべては必然として起きていることであるということです。とすると「日頃の行いが良くないから」ということなのでしょうか?安心してください、答えはNOです!
「今起きていることは、実は今起きていることではないかもしれない」ということ。難しいですね。
言い換えると、世の中で身の回りに起きていると考えていることは、すべて「私のフィルター」を通して見ている幻のようなものということです。
不運な体験だけを強調して記憶のストレージからピックアップしていませんか?
実はたくさんある素敵な体験、「見て見ぬふり」をしていませんか?
こういう心のクセを、認知療法(認知行動療法)では「選択的抽出」(selective abstraction)と呼びます。数ある事柄から、そのことだけに注目している状態です。
「私って運が悪い!」そんな考えに心を支配されそうになったら、一度大きく深呼吸をしてから、目を閉じて、しばしの間ありのままの呼吸に意識を向けましょう。そう、マインドフルネス呼吸瞑想です(本書で実践方法を紹介しています)。
呼吸瞑想は、ありのままの世界を見る目が養われることが分かっています。足元に転がる小さな幸せのカケラを集めながら生きることができたなら、あなたはすでに「幸せ上手」です。
この本について
「あるある」で学ぶ 余裕がないときの心の整え方
- 臨済宗建長寺派 林香寺の住職・精神科医
- 川野泰周 著
- ISBN: 978-4-8443-8133-4
- 定価:本体1,200円+税
- 四六判/208ページ
- ISBN: 978-4-8443-8079-5
1,000円+税(インプレスブックス参考価格)