お知らせ:イベント情報を追加しました(2018.05.07)

STORY

― 現役経済記者が娘のために書いた、笑いと涙の青春小説!―

中学2年生の「僕」は、バスケが好きな平凡な男の子。
そんな「僕」が突然放り込まれたのは、謎の大男が顧問を務めるヘンテコなクラブ。
しかも、メンバーは大富豪の美少女との二人きり。
変な顧問は「この世には、おカネを手に入れる方法が6つあります」とかなんとか妙なことを言いはじめて……。

1時間目

そろばん勘定クラブへようこそ

「福島さん、そろばん勘定(かんじょう)、って言葉、ご存じですか」
「損か得か、ちゃんと考えるという意味です」
「パーフェクト!」
 おお。ネイティブみたいな発音だ。
「そうです。損得、つまりお金の物差しで物事を見極める、ということですね」
 エモリ先生が手早く黒板の文言を書き換えた。

 そろばん勘定クラブへようこそ!

「このクラブのテーマはそろばん勘定です。残念ですが、それは出番がありません」
 年季の入ったそろばんが急に不憫に見えてきた。しかし、妙なことになってきたな。
 エモリ先生は「では、さっそく最初の問題です」と、黒板にこう書いた。

 あなたのお値段、おいくらですか?

「大事な自分の値段です。じっくり考えてください。制限時間は5分とします」
 展開が早すぎて、僕も福島さんも戸惑い気味だ。エモリ先生だけは涼しい顔で窓にもたれて校庭を見下ろしたり、空を見上げたりしている。
 それにしても、この問題、むちゃくちゃだ。先生だったら普通、人間の価値はお金なんかじゃ測れない、とか言うもんなんじゃないの?こんなこと、考えたこともないし。困ったな。僕はしばらくして、一つ、質問してみることにした。
「あの、ヒントというか、ちょっと質問が。会社員の平均年収ってどれぐらいですか」
「男性だと500万円ぐらいですかね」
 そんなもんなのか。ということは、月々40万円くらいだな。エモリ先生が時計に目をやって「はい、では、サッチョウさんからどうぞ」と促した。

「えー、一応、1億円ぐらい、だと思います」

「キリがよくていいですね。根拠を伺いましょう」
「大学を出て40年ぐらい働くとして、年収500万円なら合計2億円です。生活費とかを半分ぐらい抜いて、まあ、1億円なら、いいかなって」
「エクセレント!そういう計算を生涯賃金と言ったりします。経費を考慮したのが手堅くて良いですね。うん、順調なすべり出しです。では、次、ビャッコさん、どうぞ」

 は?

 福島さんも凍っている。
「あの、今、なんて」
「ああ、ビャッコさん。今、ワタクシが考えました。白虎(びゃっこ)隊は会津藩の名高い少年部隊です。薩長連合中心の新政府軍と戦い、飯盛山(いいもりやま)で自刃(じじん)して果てた、旧時代の花です」

 いや、それはちょっと……。
「……ビミョー……」

 そう、微妙、だよな。少年だし。死んでるし。それに、僕が敵みたいじゃないか。
「嫌なら代案を出しましょう。文句だけ言うのはズルです」
 そう言われると、僕も福島さんも沈黙するしかない。

「では決まり。ワタクシはカイシュウさん、でお願いします。勝海舟(かつかいしゅう)は江戸城の無血開城をまとめた幕閣(ばっかく)です。江戸の守りのカイシュウさん。オツでしょう」
 福島さんが諦めたように、「はい、カイシュウさん、ですね」と答えた。
 適応力高いな。「あの、カイシュウ先生、でもいいですか。なんか呼びにくいので」と僕。
「お任せします。では、ビャッコさん、あらためて、ハウマッチ」
 福島さんが淡々とした声で「とりあえず、10億円ぐらいで」と答えると、エモリ先生改めカイシュウ先生が派手にのけぞった。

「これは、ふっかけてきましたね!いや失礼。では、根拠をお聞かせください」
「わたしが誘拐されたら、祖母がそれぐらいの身代金なら払うと思います」
「ほう。あまり大きな声で言わないほうがいいですね。本気で狙うやつが出てきますよ」
 丸眼鏡の奥の目が、獲物を狙う鷹(たか)のように光った。冗談に聞こえない。

「いや、実に興味深い。サッチョウさん、何かご意見はありますか」
「10億円について、ですか」
「1億と10億という、あまりと言えばあまりな差について、でもいいですよ」
 まともな先生が言うセリフじゃないよ。

「僕が高給取りになればいいんでしょうけど、そんな先のことわからないので」
「うん、実に現実的ですねえ。ビャッコさん、庶民にひと言どうぞ」
「……10億円は自分のお金じゃないです。木戸くん、じゃなくてサッチョウさんの考え方なら、わたしの値段はもっと安いはずです」
「気を遣わなくていいですよ。それに、お祖母さんのお金って言っても、一部はビャッコさんのお金みたいなものでしょう。そのうち相続するんだから」

 ここで福島さんが「そういうカイシュウさんの値段はいくらなんですか」と反撃した。
「グッドクエスチョン。いくらぐらいだと思いますか。あ、こんなおっさん、タダでも御免って顔してますね、サッチョウさん。まあ、あえて言えば、人間に値段をつけるような愚劣な行為には与したくないですね」

 ちょっと待て。
「今度はお前が言うなって顔してますね。大人なんて汚いもんですよ。それより、お二人の意見、大変面白いです。サッチョウさんは『かせぐ』という手段からアプローチした。ビャッコさんは誘拐犯が求める身代金、いわば犯罪者による『ぬすむ』という視点から考えた。誘拐をリアルに想像したことがある、お金持ちらしい発想です」
 福島さんがむっとしたオーラを発した。カイシュウ先生は気にするそぶりもない。
「ビャッコさんのほうにはもう一つ、隠れた視点がありました。相続、つまり遺産を『もらう』です。さて、ここまでに我々はお金を手に入れる方法を3つ発見しました」

 かせぐ
 ぬすむ
 もらう

 カイシュウ先生が腕時計を見た。異様に時計が小さく見える。
「そろそろ宿題を出して終わりましょう」

 この3つ以外に、お金を手に入れる方法を3つ挙げなさい

 チャイムが鳴り、カイシュウ先生はパンパンッと手をはたくと「では来週の月曜日に」と教室から出ていった。福島さんも「じゃ、また来週」と行ってしまった。
 残された僕は、一人で黒板を丹念に消した。

登場人物

サッチョウさん(木戸隼人)

どこにでもいるフツーの中学2年生。小学校からバスケ部で、部活がない週末は公園でサッカーに燃える。消防士である父親がヒーロー。ひょんな巡り合わせで「そろばん勘定クラブ」に入ってしまう。

ビャッコさん(福島乙女)

町一番の大富豪の娘。成績は常にトップクラスで、母譲りのスマートな容姿も相まって、誰からも一目置かれる存在。物事をとことん突き詰める頑固な一面を持つ。家族の手掛けるビジネスについて悩んでいる。

カイシュウさん(江守先生)

「そろばん勘定クラブ」の顧問にして2メートルを超す大男。バイリンガルのハーフっぽいという以外、経歴等は不明。巨体が楽に収まるベンツが愛車。紅茶とスコーンをこよなく愛する。見た目は40代。

書店員さんから金融・経済界まで、
絶賛の声が続々!

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青春小説の甘酸っぱさと、タメになるお金の知識。『1冊で2度おいしい』大傑作ですね!

みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也さん
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名著です。
ご自身のお子さんに向けて書かれただけあって生き方、働き方を示唆する哲学的な本になっています。
マーケット記者として経済や投資、金融業に対する高井さんの見方が滲み出ているのも素晴らしいと感じました。
小中学生向けにお金や経済を教える本がもっともっと必要です。続刊を希望したいと思います。是非、皆さんご一読を。

経済ジャーナリスト 磯山 友幸さん
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テーマは古くからある「貨幣価値」からビットコインまで。
「お金」を軸に経済・社会・職業・労働・人生を複合的かつ有機的に結びつけた大人も楽しめる良書。
甘味は和菓子、女性は白いワンピース。ちょいちょい作者の好みをちりばめて。
知らず知らずに、教室にいて、答えを考えるよう仕向けられる文章力は流石の一言。

クレジットアナリスト なかぞらまな。さん
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人が印刷された紙きれと、硬くて円い物体…。ちょっと変わった先生が、知っているようで知らない「おカネ」の正体を明かします。
おカネとは、フツーとは、働くとは、いったいどういうことなのか。
授業を受けるたびにきっと「おカネ」の存在が身近に、体温を伴うものに感じられるはず。
先の見えない今だからこそ、ちょっと立ち止まって「経済」とのつながりを考えてみませんか。

青山ブックセンター本店 益子陽介さん
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類のない、若い世代に読んでほしい傑作。Kindle版からさらに進化してます。笑えて、ちょっと泣けて、深い。
読んだ後、お金、経済、世の中が少し違って見えてくる。

作家 田村優之さん
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経済への洞察と軽快なストーリーが絶妙。娘を持つ父親らしい視点が暖かい。
後半は一気読みでした。大人を含め、幅広い世代に読んでもらいたい!

ベテランファンドマネジャー 平山賢一さん
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リーマンショックがなぜ起きたのかなど、お金のカラクリや市民への影響をユニークな先生がわかりやすく説明してくれる1冊!!
金融不況はお金持ちだけの話ではなく、我々にとっても、とても重要なことだと教えてくれる本です。

ジュンク堂書店難波店 尊田知沙子さん

Kindle個人出版で1万DL突破!
待望の書籍化

今、自分がいる境遇と重ねて考えさせられ、"お金"、"働く"とは何かを考えるいい機会になりました

経済や金融教育の域を超え、青春小説、時事社会問題の根っこを考えるきっかけにもなるジャンルレスな好著

経済について勉強になるだけでなく、読み物としても面白かった

多少難しいことや、深~い、考えさせられることもあり、とても勉強になりました

今さら聞けない金融の仕組みを子供にもわかる平易な言葉で書いてあり、大人にもオススメ

サラリーマンが、もう一度経済の仕組みを整理するのにも役立ちそう

こういった本を、子供の頃に読んでいたら、人生は変わっていたような気がします

本書について

おカネの教室
僕らがおかしなクラブで学んだ秘密(しごとのわ)

高井 浩章 著
2018年3月16日(金)発売
定価(本体1,600円+税)
四六判/272ページ
ISBN9784295003380

電子版価格(本体1,440円+税)
※インプレス直販価格

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著者プロフィール

高井浩章(たかい・ひろあき)

1972年、愛知県出身。経済記者・デスクとして20年超の経験をもつ。専門分野は、株式、債券などのマーケットや資産運用ビジネス、国際ニュースなど。三姉妹の父親で、初めての単著となる本書は、娘に向けて7年にわたり家庭内で連載していた小説を改稿したもの。趣味はレゴブロックとスリークッション(ビリヤードの一種)。

 出版や発表の予定もないまま、ゆるゆると書き続けた7年の間、主要キャラ3人と過ごした時間は、楽しく、充実したものでした。いつの間にか一人歩きした彼らが、予想外の方向に物語を運んでくれたり、作者でも「へえ」と思うようなセリフを口にしたり。執筆が滞ると、夢に出てきて「早くわたしたちの世界を先に進めろ」と催促されたこともありました。2年前の夏に書き終わったときには、達成感と、「ああ、もうお別れか」という寂しさが相半ばする思いでした。
 このたび、旧Kindle版では小学校だった舞台が中学校に移り、素敵なイラストも加わって、3人組に新たな息吹が吹きこまれました。1人でも多くの方に、愉快な「そろばん勘定クラブ」の体験を共有していただければ幸いです。

イベント情報

2018.05.24(木) 東京

ベテラン経済記者×NO.1エコノミストが語る
「世界一わかりやすいおカネの話」
日時:2018年5月24日(木)19:00〜
会場:紀伊國屋書店新宿本店
参加費:500円
定員:50名(先着)

くわしくはこちら

2018.05.20(日) 京都

高井浩章さんトークショー
知るとおもろい「おカネ」の話
日時:2018年05月20日(日)14:00~16:00
会場:丸善 京都本店
参加費:無料
定員:30名(先着)

くわしくはこちら

2018.05.12(土) 東京

現役経済記者が、おカネの裏と表を教えます!
「LIVEおカネの教室」
日時:2018年5月12日(土)14:00~15:30
会場:青山ブックセンター 本店
参加費:1,350円(税込)
定員:50名

くわしくはこちら

メディア掲載情報

2018.03.30

NIKKEI STYLE

書店員がおすすめ 新入社員が読んでおきたい4冊

2018.03.22

KADOKAWA『ダ・ヴィンチニュース』

「この世にはおカネを手に入れる方法が6つあります」学校が教えてくれなかったお金のハナシ

2018.03.21

ビジネスブックマラソン

『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』 高井浩章・著 vol.4990